質の高いそばを目指して

Q:甘みがあり香りの高い高品質のそばを栽培するには?

いなべ市蕎麦生産部会で栽培拡大に取り組んできた初代会長の伊藤勝さんに、栽培の基本について聴きました。

伊藤勝さん(いなべ市員弁町平古)

伊藤勝さん(いなべ市員弁町平古)

A:いなべの里の気候にあった栽培が大切

そばには夏に収穫する『夏そば』と、秋に収穫する『秋そば』があります。いなべ市では『常陸秋蕎麦』という『秋そば』を栽培しています。 そばは種まきから7日で出芽し、30日で花が咲き、75日もすると収穫を迎えます(そば栽培暦参照)。そばは成長がとても早く、そばとそばの間に芽を出した雑草は光が当たらず枯れてしまうので、種まき後の手間はあまりかかりません。しかし水と寒さに弱いので、長雨で種が水に浸からず、台風で倒れず、寒くなる前に収穫することが大切です。

種まきから30日後に花が咲き始めます

種まきから30日後に花が咲き始めます

コンバインで収穫します

コンバインで収穫します

玄そばはトラックの荷台に集めます

玄そばはトラックの荷台に集めます


sobacale

そば栽培暦


全国そば優良生産表彰を受賞した藤田克己さんに、収穫された「ソバの実」を高品質な商品にして、そばを出荷するまでについて聴きました。

藤田克己さん(いなべ市藤原町山口)

藤田克己さん(いなべ市藤原町山口)

A:脱穀、乾燥した後、(1)『磨き』、(2)『石抜き』して、(3)低温倉庫で冬眠させます。

収穫したそばの実を脱穀し常温で乾燥させます。品質の高い商品にするため、収穫するときに付着した泥、石やそばのヘタを綺麗に取り除き(『磨き』『石抜き・石取り』)、粒をそろえ、適度な水分とする『いなべの里のそば』の玄そば(※)出荷基準を定め、出荷するまで低温倉庫で保管しています。玄そばをやさしく冬眠させておくことで、そばの成分の化学変化を抑えて、いつでも香り高く色の綺麗な『いなべの里のそば』を製粉することができます。
(※)玄そば:殻のついたままの実のこと

(1)そば磨き機

(1)そば磨き機

(2)石とそばの比重でふるい、選別

(2)石とそばの比重でふるい、選別

(3)袋詰めして低温で保管します

(3)袋詰めして低温で保管します


玄そばの挽き分け(左から順番)

玄そば・・・鬼がら(黒い殻)がついたままのそばの実。お米でいうともみがらの付いたもの。
丸抜き・・・鬼がらをむいたもの。お米でいうと玄米。ピンク部分を取り除いたもの。
1番粉・・・実をすりつぶした時に最初に出 る粉。更科粉ともいい、粘りは少ない。
2番粉3番粉・・・1番粉よりも外側の部分で、香りが強く粘りがある。
下粉(甘皮部分)・・・2番粉、3番粉に混ぜて使用。

玄そばの挽き分け

玄そばの挽き分け

 -初出:いなべ市情報誌Link 2011年11月号


いなべ市蕎麦生産部会「いなべの里の蕎麦」全国への挑戦

2002年に農産物直販所うりぼうを建設したとき、体験室を作り、員弁町(現いなべ市)でそばの栽培と製粉・蕎麦打ち体験を始めましたのがきっかけです。

■目指せ!いなべのトップブランド

そばを市の重要な農産物と位置づけ、ブランド化に取り組んでいます。2002年から生産を開始し、2008年度には生産農家8軒が集まり、いなべ市蕎麦生産部会を設立。
味と品質の高さから名古屋の有名店でも使用。そば粉だけでなく付加価値を付けた商品開発で、そばの生産量を拡大させ、農家の所得向上につなげています。いなべ市のトップブランドとして、「いなべの里の蕎麦」を全国へ発信しています。

■おいしいそばが育つ自然環境

おいしいそばが育つ条件は、ソバの花が咲く時期から実が大きくなるまでの気候が、冷涼で昼夜の気温差が大きいこと。10月のいなべ市の気候がこれにぴったりです。また、そばは水が大の苦手。灌漑用の溜池に頼る水田農業を行う地域では、この水の不便さがそば栽培に好都合です。

■三重県内生産No.1

2013年の作付面積は、92.4haで県No.1。サルの被害に苦しむ農家もそばなら被害を受けず安心して栽培できます。生産されるそばは、市内消費としてそば屋さんに2トン、そば打ち愛好者に2トン、そば商品に3トン程度で、大部分を契約栽培先の愛知県・神戸・大阪の手打ちそばの名店といわれる店へ販売。

■そばで地域おこし

そばには人と人のつながりを育む不思議な魅力があります。いなべ市では、そば打ちを楽しむ人や指導する方が続々とでてきており、そばで交流を広げようとする市民が増えています。市内のそば打ち団体は、うりぼうを含め5団体。加えて小学校の親子行事や総合学習で児童が打つ体験プログラムは、次世代のそば打ち愛好者や「いなべの里の蕎麦」を誇りに思う人をはぐくみます。名物つくりは、まず市民から芽生え、育てみんなで発信し「いなべはそば」と胸をはって言える土壌を作っています。
また、蕎麦生産者部会・そば打ち団体・市で実行委員会を作り「そば祭り」を行い、全国から名人を招き、そば打ち指導などの催しを行い「いなべの里の蕎麦」のPRを行っています。

合言葉は、“そば打ち人口日本一”「いなべブランド」を全国へ発信。

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